2015年11月9日月曜日

主要パスタブランドのママー、オーマイ、ディチェコ、バリラの違い特徴比較

パスタ自体はかなり好きなのだが、パスタの企業だったりブランドだったりといったものを
あまり理解していなかったので、この機会に主要なパスタブランドにどんなものがあって、
違いは何なのかなどの特徴比較について、調べたことをまとめておこうかと思う。

まず、パスタの原料である小麦粉を取り扱う製粉業者の大手は日清製粉と日本製粉
の2社があり、この2社で日本の小麦粉販売シェアの6割近くを握っている。
製粉業界の動向と課題

で、このトップシェアの2社がそれぞれ国内ブランドのパスタと海外ブランドのパスタを
1種類づつ計2種類を展開しているので、パスタの主要ブランドは計4種類存在する。

業界最大手の日清製粉は国内ブランドはマ・マー、海外ブランドはディ・チェコ(DE CECCO)
を展開し、業界2番手の日本製粉は国内ブランドはオーマイ、海外ブランドはバリラ(Barilla)
を展開している。


ヨーロッパではバリラ社のパスタシェアが圧倒的なようだ。下記の資料によると、
バリラのシェアが約14%で、2位はネスレのブイトーニで約4%、ディ・チェコは約3%で
シェアとしては業界3位ということになる。
Consumer Trends Pasta Market in the EU27

では国内ブランドのマ・マーとオーマイのシェアはどうかというと、日清製粉、日本製粉の
各社ともパスタブランド別の売上高を出していないので公式ソースはないのだが、
下記の個人ページによると、日清製粉のマ・マーが30%、日本製粉のオーマイが20%強
とのこと。
こだわり道場 過去ログ ビジネス
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パスタ業界では、「日清フーズ(日清製粉グループ)」の「マ・マー」が30%強のシェアで1位、「日本製粉(NIPPN)」の「オーマイ(王米)」が2位で20%強となっているようです。
この順位は今回調べてはっきりしたのですが、「オーマイ」が1位でないことは前から確信していました。
以前「オーマイスパゲティ」のテレビCM、「オーマイ家の一日」でこんなのがあったんです。

庭かどこかでお母さんがスパゲティー料理を作っている。確かお母さんは秋野暢子。
子供が出てきてお母さんに「ママー」と言ったとたん秋野暢子が、
「ウチではママって言わないの! お母さんって言いなさい。」

ライバルを名指しして行う比較広告(これは比較ってほどではないけれど)は弱者の戦略。通常トップのメーカーはやらないですからね。
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あっ、なるほどね。たしかにコカコーラがわざわざペプシコーラとの比較広告を出すことは
ありえないのと同様、オーマイがそんなCMしている時点で業界1位ではないのはわかるね。
小麦粉のシェアと同様にパスタのシェアでもマ・マーを展開する日清製粉が1位ということか。

ちなみに余談ではあるが、激安スーパーのOKは、パスタに関して業界1位の日清製粉とは
ほとんど取引をせず、業界2位の日本製粉と集中的に取引をすることで、販売量を確保し、
値段を大きく下げるという戦略を取っている。だからオーマイとバリラが安い代わりに、
マ・マーとディ・チェコが棚にない。あと、西友はディ・チェコを日清製粉から仕入れず、
独自の輸入代理店から仕入れることで他より安く売っているね。


さて、マ・マーとオーマイの違いに関しては、値段が安い方を買うくらいの認識で、
気にする人もあまりいないだろうし、メーカー側も万人受けする大衆パスタという
コンセプトで商品展開しているだろうから、特に議論をする必要もないだろう。

問題はディ・チェコとバリラの違いだ。私自身はどこで食べても普通においしいレベルの
パスタが多い中、明らかにおいしいと初めて思ったのが中野のパスタキッチンという
お店で、そのお店ではディ・チェコを使っていたので、パスタのすごくおいしい専門店は
ディ・チェコを使うんだというイメージが強烈に刻まれているのだが、どうもプロの間では
バリラも同様に人気があるようだ。

ディ・チェコとバリラの違いに関してはプロの料理人が書いている記事・レビューが
かなり参考になる。いくつか紹介。


パスタのブランドについて質問です。 - 国産のものよりどちらかといえば輸入品を... - Yahoo!知恵袋
ディ・チェコとバリラの特色や違い、どこが一番おいしいのかについての質問に
イタリアンシェフだった方が回答をしている。この方によると、イタリアのパスタ屋では
バリラが使われていることが多く、イタリア旅行でパスタがおいしいと感じることが
多いのはバリラ社のパスタを食べることが多いからとのこと。特にNo5が人気と。

一方ディ・チェコは日本人のシェフには一番人気のようで、日本ではバリラよりも
需要が多いとのこと。

なるほど。イタリアやヨーロッパでは圧倒的にシェアNo1なバリラだけど、日本では
業界1位の日清製粉が展開するマ・マーとディ・チェコが日本製粉のオーマイとバリラを
ともに圧倒しているのね。


パスタブランド研究所 ディチェコとバリラ編 その1
パスタブランド研究所 ディチェコとバリラ編 その2
パスタブランド研究所 ディチェコとバリラ編 その3
もう一つ、ディ・チェコとバリラの違いを知る上でかなり参考になったのがこの記事だ。
既に閉店してしまった三重県のイタリア料理店ラ・リナシャンテの方が書いていた
ブログの記事。食べログのレビューを見ていたら、値段は高いけどおいしいという
評判が多かったので、信頼できるプロの料理人のレビューなんじゃないかなと思う。
お店が閉店してブログの更新もやめてしまっているので、ネットの海にこれだけの
良記事が埋もれてしまっているのはもったいないなと思う。ちょっと内容をまとめてみる。

まず、パスタには表面がザラザラしているブロンズダイスとテカテカつるつる光沢のある
タイプのテフロンダイスの2種類があるとのこと。ブロンズダイスのパスタはディ・チェコ、
テフロンダイスのパスタはバリラやマ・マー、オーマイなどになる。

参考までにディ・チェコのブロンズダイスの画像とバリラのテフロンダイスの画像を。
拡大に耐えられるものを探してきたので、拡大すると違いがよくわかるかと。

さて、ザラザラしたブロンズダイスはソースが絡みやすいというメリットがある一方、
アルデンテを作るのにコツがいり、長くそれを維持するのが難しいというデメリットがある。
これは強い火で茹でるとパスタの表面が削られてしまうため。

一方テカテカつるつるのテフロンダイスは、アバウトに茹でてもアルデンテの状態を
作りやすいというメリットがあるとのこと。さらにバリラ社のパスタに関しては、
アルデンテの状態が長続きするようだ。

なるほどたしかに。ディ・チェコを使っているパスタキッチンのパスタは間違いなくおいしい
のだけど、自宅でディ・チェコを使っても、ラベルに書いてある7分で茹でてもアルデンテに
ならないんだよねぇ。5分だとなるけど。あと、適当に市販のソースをボールで混ぜている
からなのか、パスタとソースの絡みがあまりよくない。つまり、ディ・チェコを使おうが、
素材の特性をわかっている調理に長けた人がやらないとそこまでおいしくはならないのかも
しれないなぁというのは実際にディ・チェコを使ってみた印象かな。

記事執筆後、パスタキッチンに行ったときにディ・チェコの茹で時間を計測したら6分だった。
6分がベストかも。自宅で何度か5分にして食べたら、アルデンテではあるんだけど、ソースと
絡めた後でもはっきりと硬い芯が残ってしまっていたので、さすがにやり過ぎかなとは思った。

ちなみにラ・リナシャンテの方によると、テフロンダイスのソースに絡みにくいという
デメリットは、プロなら調理の中でソースを繋いでいくテクニックでカバーできるので、
問題ないとのこと。ということで、ラ・リナシャンテではバリラ社のパスタを使っていた
みたいよ。


さて、上記3つ目の記事では、ディ・チェコとバリラそれぞれを、オリーブオイルと
生クリームとトマトソースの3つに絡めた状態で味の比較を行っている。それぞれ
アルデンテで茹で上がってから5,6分経った状態で食した時の感想を複数人で
レビューを行っている。

それによると、ディ・チェコに関してはオリーブオイルとの絡みが抜群によいようだ。
一方トマトソースや生クリームと絡めた場合は、バリラのパスタとそこまで圧倒的な
差は感じられなかったとのこと。また、アルデンテが茹で上がって5,6分経った状態だと、
もう続いてはいないとのこと。

一方バリラに関しては、どのソースでも安定していて、さらに食感のプリプリさが持続
しているとのこと。

なるほどね。このラ・リナシャンテの方々はお店でバリラを使っているだけあって、
バリラ派なわけだけど、それでもオリーブオイルとディ・チェコの相性の良さは、
明らかによいと認めているわけか。

私はバリラを使っているパスタのおいしいお店で食べたことがないので、良し悪しが
わからないのだが、ディ・チェコを使っているパスタキッチンでは、たしかにおみピリや
ペペロンチーノなどのオリーブオイルと絡めたパスタが特においしかったと記憶している。
もちろんソース自体がおいしいから、ミートソースもクリームソースもおいしいのだけど。


この記事書いてから気になったので、バリラを使用している東京でおいしいパスタのお店を
見つけて食べてきた。ハシヤというお店が有名なようだ。いくつかお店があるようだが、
たまたま行った木曜日が代々木八幡の本店が休みだったので、幡ヶ谷分店に行くことに。
ここは21時閉店が多い他のハシヤよりも遅い22時半までやっているのもいい。

で、食べてみたら、たしかにおいしい。相当においしい!こりゃバリラを使うお店も
あるわけだと納得した。で、おいしいメニューがディチェコを使うパスタキッチンと対照的
なのも面白かった。

ハシヤで圧倒的においしいのはたらこ系のパスタ。私が食べたのはタラコ・ウニ・シソ。
これを食べるとバリラの良さがよくわかると思うが、アルデンテがすごくしっかりしているのよ。
それなのに、プロの技術でタラコ・ウニのソースがパスタにしっかり絡みついていて、
ものすごくおいしい。ベースのソースがチーズとノリと書いてあったので、チーズを使って
ソースを絡ませているのかもね。

逆に普通だったのはペペロンチーノ。ソース自体は悪くないのだけど、やっぱりパスタと
オイルベースのソースが分離してしまっている印象は否めなかった。

中野のパスタキッチンは逆なのよ。ペペロンチーノはものすごくおいしくて、他のも
何食べても大体おいしいのだけど、普通だなと思った数少ないメニューの一つがたらこ。
ここのたらこスパゲッティですら「普通においしい」レベルに留まってしまうということは、
これはたらこスパゲッティ自体の限界なのかなと思っていたら、まさかのハシヤで
至高のたらこスパゲッティに出会うことになるとは思わなかった。

ということで、私自身も食べてみて、比較記事を書いていたラ・リナシャンテの方と同じ
結論になった。オイルベースのパスタであるペペロンチーノに関してはディチェコを
使っているパスタキッチンのものが圧倒的においしくて、それ以外に関しては、
バリラを使っているハシヤのたらこスパゲッティがおいしかったり、ミートソースや
ウニとマッシュルームのクリームソースやらはパスタキッチンがおいしかったりと
メニューによるという感じ。ディチェコはもちろん、バリラもイタリアで一番使われている
だけあっていいパスタだなと思った。

上記で名前を出したお店の食べログページを再掲。

・ディチェコを使っている中野のパスタ専門店パスタキッチン。おすすめは、
おみピリやペペロンチーノ、モッツァレラとパルミジャーノチーズのトマトクリームソースなど。
パスタ キッチン (PASTA KITCHEN) - 中野/パスタ [食べログ]

・バリラを使っている代々木八幡や幡ヶ谷のスパゲッティ専門店ハシヤ。おすすめは、
たらこ系のスパゲッティで、タラコ・ウニ・シソやタラコ・ウニ・イカが特に人気。
ハシヤ スパゲティ 代々木八幡本店 - 代々木八幡/パスタ [食べログ]
ハシヤ 幡ヶ谷分店 - 幡ヶ谷/パスタ [食べログ]

なお、さらに後日、ジョナサンでバリラNo.7(1.9mm)を使っていることがわかったので、
食べてみたのだが、全然おいしくなかった。そのそもジョナサンはアルデンテで提供する気
ゼロのようだ。あくまで上記で名前を挙げたような「おいしいお店」でこそ真価が発揮される
のが、ディチェコとバリラの2つのパスタと言えるだろう。

最後にディ・チェコとバリラの売れ筋と最安値に関する情報でも。楽天などで見る限り、
ディ・チェコの一番の売れ筋はNo.11のスパゲッティーニ(太さ1.6mm)で、
バリラの一番の売れ筋はNo.5のスパゲッティ(太さ1.7mm)のようだ。
ただバリラに関しては、次いでNo.3のスパゲッティーニ(太さ1.4mm)もかなり人気が
あるようなので、好みに応じてどちらかを選べばよいだろう。

値段に関しては、基本的に実店舗のスーパーなどよりもネットの方が安い。

ディ・チェコの例でいうと、定価で売っているスーパーは500gのスパゲッティーニで
税込300円程度で販売をし、安めのスーパーでも税込270円前後であったが、楽天だと
税込212円という激安のお店も存在する。ただ、ネット上だと送料がかかってしまうので、
少額の購入だと高く付いてしまう。ネットでの購入がお得になるのは、1箱、つまり24袋入り
で購入する場合になるだろう。24袋単位で買う場合は送料無料にしているお店が多い。
現在の1ケースでの最安値は楽天の子会社がやっている楽天24の送料税込5805円。
つまり、送料税込だと1袋あたり税込241円が最安のようだ。
楽天市場でディ・チェコNo.11スパゲッティーニを探す

バリラに関しては、日本におけるブランド力の差なのか、それとも製法の違いによる
コストの差なのか、ディチェコよりも安値で売られている。実店舗のスーパーの相場だと、
No.5のスパゲッティ、No.3のスパゲッティーニともに450gのタイプで定価だと税込250円程度、
安めのお店だと税込200円前後で売られている。100gあたりでいうと44円~55円程度。

ネット上だと送料が掛かる分まとめ買いのサイズが人気で、5kg単位での販売が多い。
5kg袋タイプのネット上の最安値は送料税込で計算すると2200円程度なので、
100gあたり44円程度。5kgで買うならネットで買うのではなく、安いスーパーを探したほうが
よいだろう。送料無料のものが増えるのは5kg袋の3セットのケース売りで販売をしている
商品だ。このタイプだと最安値なら送料税込4750円で販売をしているので、100gあたりの
単価は31円と実店舗で購入するより大幅に安くなる。
楽天市場でバリラを送料無料で探す

なお、余談になるが、ハシヤが使っているのはバリラのNo.5のスパゲッティ(SPAGHETTI n.5)
なんだけど、下記の通り市販品ではなく、最高級デュラム小麦を使用したプロにのみ販売
されている業務用最高級品である、セレツィオーネ オーロ シェフ(SELEZIONE ORO CHEF、
各単語を英語で書くとselection gold chef)ブランドのスパゲッティ(No.5)を使用している。

市販のバリラよりもさらにプリプリのアルデンテが長続きするのが特徴のようだ。
プロユースのものなので、一般の消費者は本来入手できないはずなのだが、なぜか
楽天等に出店している神戸ヴァッラータというお店だけはネット上で一般販売をしている。
代理店に流通止められたりしないのかね?

プロユースだけあって、値段も1kgで1000円近くするので、おいそれと日常使いできる値段
ではないが、バリラのアルデンテにこだわりたい人はこれを使ってパスタを作ってみるのも
ありかもしれない。計測したらハシヤ新宿店と代々木八幡本店は9分で茹でていて、
幡ヶ谷分店は8分で茹でていた。バリラならではのアルデンテの食感は幡ヶ谷分店のほうが
よかったので8分が茹で時間としては正解なのだと思う。

ちなみに、新宿店はアルデンテが甘くて、タラコウニイカのパスタもなぜか味が濃すぎて
あまりおいしくないという残念な出来だった。本店もまぁまぁで、タラコやウニ系のパスタが
一番おいしかったのは明らかに幡ヶ谷分店だった。なんで幡ヶ谷分店のパスタが頭一つ
抜けておいしいのかは、のりとチーズのプレーンスパゲッティという一番安い700円の
メニューを頼んでみればわかるかと。このベースとなるスパゲッティの味のバランスがよいので
そこにタラコやウニを載せた時に味が生きてくるのだろうと思う。