なになに? SBI-Man リキッド・トレンド・ファンドの公式ページによると、約26年の運用で世界株式の4倍のパフォーマンスを「バックテスト」では出したと。
ではここで、SBI証券が過去に実際に似たようなコンセプトで売り出した「SBIラップ」という商品が、事前にどのような「バックテスト詐欺」グラフを使って売り出し、結果どうなったのかを見ていきましょう。
まず上記が2022年6月時点の「SBIラップ」ランディングページに載っていたバックテストのグラフ。
10年程度で一般的なロボアドバイザーの1.5倍のパフォーマンスを出しているように見えますね。今回のリキッド・トレンド・ファンドのグラフとそっくりです。
で、じゃあそれが実際にはどうなったのか?2024年3月の実績レポートに記載されている実績グラフが下記。
え?約2年間の「実際のパフォーマンス」はTOPIXに負けていて、さらには一般的なロボアドバイザーにすら負けている??これ「バックテスト詐欺」以外のなにものでもないよね?
ちなみに同一期間の主な指数の推移がどうなったか見てみましょうか?
上記が同じ期間(2022年4月7日~2024年3月29日)でいろいろな指数を並べてみたもので、上から順に、FANG+が59.37%、SOX指数が54.45%、日経225(日経平均)が44.49%、nifty50(インドの代表的なインデックス)が26.59%、NASDAQ100が26.39%、S&P500が17.07%、ダウ平均が14.65%、VTI(CRSP US Total Market Index)が14.46%(米国版ヤフーファイナンスの数値なので各現地通貨ベースの実績)。さっきの「SBIラップ」のグラフの実績が、上から順にTOPIXが46.26%、一般的なロボアドバイザーが29.77%、SBIラップが22.27%(おそらくはいずれも円ベースの実績)。
この日本株がやけに強かった期間でも、SBIラップが勝っていたのはS&P500とダウ平均とVTIくらいで、一般的なロボアドバイザーにすら負けていたと。
なお、S&P500は投資信託の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」だと2022年4月8日の基準価額が19472円、2024年4月1日の基準価額が28563円なので、円換算だと46.68%上がっていて、同様に楽天VTIで見ると44.54%上がっているので、為替影響を含めて基準を揃えた比較だと上記すべての指数にSBIラップは負けている。
ちなみに、おそらく一般的なロボアドバイザーってウェルスナビのことだと思うのだけど、そうだとすると、VTI(全米株式)とVEA(日欧株式)で全体の3/4を占める運用かな。
これらほとんどの指数に負けているのに、未だにバックテスト込みのグラフを載せて、一般的なロボアドバイザーに勝っているかのごとく宣伝しているのは「バックテスト詐欺」以外のなにものでもないよね。
SBIはこういうことをやらかしてきた実績があるから、バックテストの綺麗なグラフを見せて、中身はよくわからないけどすごいファンドですよ、的な売り出し方をされても、全く信用できない。ということで、SBI-Man リキッド・トレンド・ファンドのバックテストグラフは全く信用できないので、2年後くらいの「実際の実績」を見てから判断すべきだと思う。
もう1個見つけた!今度はマングループがやっている似たようなコンセプトのファンドの詐欺グラフ。
マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド(愛称:スマレバ)
上記販売資料によると、1994年12月末から2024年4月末までの約30年で、世界株式は9倍前後のパフォーマンスのところ、このスマレバとやらは24倍近くのパフォーマンスを出す「シミュレーション」らしい。で、実際の設定日2019年11月12日から2024年4月30日までの結果はどうなったか?
え?マイナスじゃん!設定来から6.9%のマイナスじゃん!SBIの画面で最新のデータも見てみるか。上記が2024年8月23日時点のSBIでの画面で、左がスマレバ、右がeMAXIS Slim米国株式(S&P500)の実績。1年実績も3年実績もスマレバが負けてんじゃん!ついでに暴落時の挙動が分かるグラフも並べてみた。
日経平均が過去最大の4451円の下落に見舞われたのが2024年8月5日で、その日を含むS&P500の最高値の2024年7月11日から2024年8月6日(投資信託は1日動きが遅れる)の、つまり上記最高値から最安値の挙動を見れば、市場暴落時のスマレバの実績も分かるはず。
まずeMAXIS Slim米国株式(S&P500)は7/11が32813円、8/6が27091円で17.43%の下落。
次にスマレバは7/11が9687円、8/6が9708円で日付を揃えると0.21%の上昇。ただ、グラフを見るに、最高値と最安値の時期がS&P500と少しずれているみたいなんだよね。
近いタイミングの最高値が7/16の9912円、最安値が8/8の9312円。こちらで計算すると6.05%の下落となる。こちらの方が日にちは少しずれているが、実際の実績に近そう。
このスマレバはリキッド・トレンド・ファンドと同様に、いろいろな先物に投資を行うタイプのファンドで、結論、株式暴落時の下落幅はS&P500のファンドより抑えられそうだが、長期の「実際の」パフォーマンスはS&P500に余裕で負けている。
この通り、SBIラップの事例でも、 マンAHLスマート・レバレッジ戦略ファンド(愛称:スマレバ)の事例でも、販売前のバックテストとやらの詐欺グラフの見た目とは裏腹に、実際の実績ではインデックスファンドにボロ負けしている。
これで上記クソ実績と売り方が悪魔合体したようなSBI-Man リキッド・トレンド・ファンドが信用できるわけないだろ!