2016年1月17日日曜日

セイコーやシチズンの価格帯による高い時計と安い時計の違いについて

下記の記事の続き。
セイコー(SEIKO)とシチズン(CITIZEN)の違いをラインナップの観点から
前にセイコーとシチズンについて、価格帯によってどんなラインナップがあるのかという
ことを中心に記事を書いたのだが、どうも具体的に高い時計と安い時計で何が違うのか
というのが気になる人がそれなりにいるようだったので、説明をしてみようと思う。

まず、セイコーとシチズンの同価格帯の時計については、基本的に機能差はほとんど
ないと言っていいです。なぜかというと一方にしかない機能を他社も取り入れてくるから。
ただ、高級時計に関しては、セイコーが歴史とブランド力を持っている分、かなり異なって
いるが。

で、時計の価格帯によって大きく変わってくるのは材質と加工ですね。
いくつか観点を出しましょう。

▼時計のガラス(風防)の種類
・プラスチックガラス(アクリルガラス、樹脂ガラス)
1000円とかの激安で売っている時計で使われるガラスで、名前の通り材質はプラスチック。
加工も簡単で安価に作れるが、傷が付きやすく、耐久性がない。
セイコーやシチズンで言うとALBAやREGUNO、Q&Qの安価なモデルで使用されている。

・ミネラルガラス
1万円前後で売られているような時計で使われているガラスで、いわゆるガラス。
ガラスのモース硬度は4.5~6.5なので、それより硬い鉄や石にこすれると傷が付く。
セイコーやシチズンで言うとALBAやREGUNOのそこそこの値段以上のモデルで使用。

・サファイアガラス
3万円以上で売られているような時計で使われているガラスで、材質は人工サファイア。
サファイアのモース硬度は9なので、傷つけることができるのはモース硬度10のダイヤモンド
しかない。つまり日常生活で傷が付くことがほぼなくなるが、硬い分加工が難しくなり、
コストも高くなる。セイコーやシチズンで言うとルキアやクロスシー以上の価格帯のモデル
ではサファイアガラスが使われている。

上記で出てきたモース硬度について詳しく知りたい方は下記を参照のこと。
サファイアガラスとミネラルガラスを傷つけられるものは何かモース硬度から考える

▼ケースとバンドの種類
・プラスチック
一番安いのがこれ。バンドのくぼみの部分にアカが溜まるのが欠点であるが、
金属アレルギーにならないので、安い時計の中での選択肢としては有力

・ステンレス
実はステンレスにもいろいろな種類がある。金属アレルギーになりやすいものからなりにくい
ものまで。ただ、一般的に時計メーカーはケースやバンドに用いているステンレスの種類を
公開していないので、この観点で選ぶのは難しい。ただし、セイコーやシチズンの中級価格帯
以上の時計は何かしらのコーティングをするなど、金属アレルギーの対策を行っている。

-SUS304
クロム18%、ニッケル8%が主成分の合金で炭素含有率は0.08%以下のステンレス。
ニッケルを含んでいることで錆びにくいが、金属アレルギーになりやすい。
シンク等の水回りなど、一般的に広く使用されているステンレス。

-SUS316
クロム18%、ニッケル12%、モリブデン2%の合金で炭素含有率は0.08%以下のステンレス。
モリブデンが含まれることで、SUS304よりも錆びたり溶けたりしにくくなっている。
その分価格もSUS304より高くなる。

-SUS316L
クロム18%、ニッケル12%、モリブデン2%の合金で炭素含有率は0.03%以下のステンレス。
末尾のLはLowCarbon(低炭素)の略で、炭素含有量をSUS316よりも少なくすることで、
少し強度が落ちる代わりに錆びたり溶けたりしにくくしたもの。金属アレルギーが問題に
なるような医療用のメス等で使用されている高価な鉄。
ブライトリング、パネライ、ゼニス、グランドセイコー等の高級時計でも使用されている。

-SUS904L
クロム19%、ニッケル23%、モリブデン4%の合金で炭素含有率は0.02%以下のステンレス。
クロム、ニッケル、モリブデンの含有量が高いことで、より堅牢に、硝酸や硫酸にも
溶けないようにしたステンレス。ロレックスの時計で使用されている。 ただし、ニッケルの
含有量が高いことで、金属アレルギーのリスクは高くなる。

・チタン
国内の時計メーカーでは、ステンレスの質を変えるというより、ステンレスをコーティング
するか、チタンを用いて金属アレルギー対策を行うメーカーが多いようである。
金属アレルギーになりにくい分、色がステンレスよりも鈍く、はっきり言うと美しくない外観に
なる傾向にあるが、セイコーが開発したブライトチタンという素材は、ステンレスに近い
輝きを放つように改良がされている。これはブライツ等、10万円前後の準高級価格帯の
時計に使用されている。

▼クオーツの種類
・月差クオーツ
月に15秒~20秒程度ずれる精度のクオーツ。大抵のクオーツはこれ。

・年差クオーツ
年に5~10秒程度のずれしか生じない選りすぐりのクオーツ。グランドセイコーやザ・シチズン
などの最高級クラスの時計で使われている。

▼加工の種類
・ザラツ研磨
回転する研磨紙を張ったスズの円盤にケースの面を押し当てて鏡面仕上げをする手法。
手作業になるので、高級時計で使用される技術。下記の動画を参照。

この技術を使っている時計は、端的にいうとケースが自然な丸みを帯びた感じになる。
ゴツゴツしていない感じ。

・青焼き針(ブルースチール針)
300度近い温度で一定時間鉄を焼くことで鉄を綺麗な青色に発色させる技術。
これも適切な温度と時間管理が必要なため、一つ一つ手作業で行うことになる。
ちなみにカシオのオシアナスの青い針は、この焼いた針ではなく、単に青く塗った針。
クレドールやグランドセイコーの50万以上のモデルで青焼き針を使ったモデルがあったかと。
ちょっとおもしろい動画を見つけたので下記に置いておこう。ブルースチール針とは
何なのか、下記を見るとイメージできるかと。



▼機能の違い
10万円以下の時計に関しては、機能で値段に差を付けているケースが多いかと。
主には下記の2つ。

・ソーラー式
太陽光で発電をするため、内部の充電池の寿命が尽きるまでは電池交換が不要になる
仕組み。

・電波時計
送信所から発信される電波を時計内部のアンテナで受信することで、自動的に時計
合わせを行う機構のこと。


以上、高い時計と安い時計で変わる部分に関して、記載をしてみた。価格帯別で
どう変わってくるのかをざっくり書いてみると、

・1万円前後の低価格クラス(アルバやレグノ、Q&Qなど)
バンドやガラスが安いもの(せいぜい普通のガラスや安いステンレスなど)を使っている

・3万円以上の中級価格帯クラス(ルキアやクロスシーなど)
ガラスはサファイアガラス、金属バンドも金属アレルギー対策のコーティングなどがされる
ようになる。モデルによってはソーラー式や電波時計機能も搭載されている

・10万円前後の準高級価格帯クラス(ブライツ、アテッサなど)
バンドに高級チタン素材を使ったものなども登場。加工に高級感が出てくる

・20万円以上の高級価格帯クラス(グランドセイコー、ザ・シチズン、クレドールなど)
年差クオーツや機械式なら日差5秒前後の高精度のものなど、素材が厳選されてくる。
加工にザラツ研磨や青焼き針など、手作業が必要な技術が使用され、加工の高級感が
高まる。

というのがざっくりしたくくりになるかと。基本的にはグレード別に素材や加工の手間が
変わり、同じグレード(ブランド)内では、ソーラーや電波などの機能で価格差を付ける
というのが時計メーカーの典型的なやり方かと。